2011年11月26日土曜日

量的緩和は本当に有効か?

「土地や金融資産の取引高はGDP(=実物経済取引高)に含まれない!」 
(こんなことも知らずに、最近経済学を勉強しています」といっていた自分が恥ずかしい。)
昨今ではいくら貨幣を発行して量的金融緩和をしても、マネーは資産市場に流れやすい。
量的緩和は、資産インフレは起こしても、一般物価のインフレや(名目)GDPの成長はそう簡単には実現できないという、疑念がよぎる。
リフレ派の方々には、この点について、確度の高い証拠を示しつつ答えていただきたいと思う。

量的緩和がGDP成長につながらないとする論客の中で定量的議論に強いのは水野和夫氏(管内閣の経済アドバイザー)。一方、リフレ派の中で定量的議論に強いのは高橋洋一氏(小泉内閣で竹中平蔵氏の知恵袋。)
この二人に直接バトルをやってほしい。おそらく原発問題よりも早く意見が収束すると思われる。
量的緩和の効果としては、リチャード・クーが指摘する、企業の「バランスシート不況」の解消が挙げられるだろう。企業の保有する金融資産や土地資産価格が下がると、利益が出ても負債の圧縮に当てられ、設備投資(実物)する余裕がなくなる。従って、量的金融緩和によって資産価格を上昇させれば設備投資が増えるだろう、というわけだ。(※)
しかしながら、水野和夫の指摘によると、日本企業が戦後から90年代までに銀行から受けた貸し出しの総額は、すでにキャッシュフローによる返済が不可能な水準に達していた(『100年デフレ』123頁)。これが本当だとすれば、これまでの量的緩和で企業のバランスシートが回復しきったのかどうか疑問がある。とすれば、あとどのくらい量的緩和を行えばよいのか、その金額には不確実性がかなりあることになる。
リフレ派には、量的緩和の具体的な額と継続年数を不確かさ付きで示してほしいところだ。
(お前は何様のつもりか、と言われてしまいそうだが)。
ところで、FRB議長のバーナンキの狙いは、企業のバランスシート調整にとどまらない。リスクの高い資産を買い取ることによって、資産投資への不安を解消しようというものだ。 
金融・サービス業が中心く、かつドルが基軸通貨である米国と違って、財の生産で稼ぐ企業にエクセレント・カンパニーが多く、かつ円が基軸通貨でない日本では、この手は使えないだろう。 
 ただし、オリンパスの例を見ると、「エクセレント・カンパニー」と呼ばれている企業が、本当にエクセレントなのか疑わしくなってくるのではあるが。  
 負債が多いからと言って、バランスシートをごまかすことは絶対にしないで欲しいと思う。日本全体での負債総額の値が信用できなくなる。
 現状を正確に把握できなければ、再生もない。


(※)
Wikipedia「リチャード・クー」の記事の「バランスシート不況」の項では、次のように「資産デフレスパイラル」として説明されている。
「・・・負債圧縮、借金返済のために資産の売却や設備投資の縮小が行われ、これが更なる資産価格下落や景気の悪化を呼び、企業のバランスシートを悪化させる。そしてこのことが更なる負債圧縮、借金返済を迫り、資産価格の下落や景気悪化をもたらすという悪循環が起きる」
(11月30日追加)

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