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2011年11月26日土曜日

GDPにカウントされないもの ―社会関係資本―

前稿で、土地や金融資産の取引高はGDPに含まれていないと述べた。
ただ、国民経済計算体系の貸借対象表や資金循環勘定では補足さているのかもしれない。
(こんなこともまだ確かめていなところからしてシロートなのだが。)
しかし、GDPにカウントされない、否、国民経済計算体系では補足できないものは、たくさんあるのだ。
例えば、社会関係資本(人間関係資本)の増減は、GDPにはカウントされない。
そして、日本の社会関係資本は他のOECD諸国とくらべて少ない。

また、働けない人に対する考え方がひどい。

"What the World Thinks in 2007: The Pew Global Attitudes Project"
というアンケート調査によると
「働く能力のない人が生活に困っても政府は援助する必要はない」と言う設問にYESと答えた日本人が何と38%もいるというのだ。
米国ですら28%、他の先進国は10%以下だそうだ。ブラジルや中国でもやはり少ないらしい。
(出典:波頭亮氏の日経BPオンラインの記事
「
「成長論」から「分配論」を巡る2つの危機感 ―自力で生活できない人を政府が助ける必要はない!?―」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20111114/223822/?rt=nocnt)
日本はこんな国で本当によいのか!
自殺者が多いこととも関係があると思われる。

イタリアは、今かなり大変なことになっている国だが、失業した人を親類縁者が面倒を見るという社会習慣があるときく。超競争社会の米国でも、キリスト教会などが提供するセーフティ・ネットがある。

戒律型宗教のない日本だが、「社会関係資本」の形成について、根本から考え直す作業を皆が行なう必要があると思う。
「ソーシャル・カフェ」と銘打って実施してみてはどうだろうか?

量的緩和は本当に有効か?

「土地や金融資産の取引高はGDP(=実物経済取引高)に含まれない!」 
(こんなことも知らずに、最近経済学を勉強しています」といっていた自分が恥ずかしい。)
昨今ではいくら貨幣を発行して量的金融緩和をしても、マネーは資産市場に流れやすい。
量的緩和は、資産インフレは起こしても、一般物価のインフレや(名目)GDPの成長はそう簡単には実現できないという、疑念がよぎる。
リフレ派の方々には、この点について、確度の高い証拠を示しつつ答えていただきたいと思う。

量的緩和がGDP成長につながらないとする論客の中で定量的議論に強いのは水野和夫氏(管内閣の経済アドバイザー)。一方、リフレ派の中で定量的議論に強いのは高橋洋一氏(小泉内閣で竹中平蔵氏の知恵袋。)
この二人に直接バトルをやってほしい。おそらく原発問題よりも早く意見が収束すると思われる。
量的緩和の効果としては、リチャード・クーが指摘する、企業の「バランスシート不況」の解消が挙げられるだろう。企業の保有する金融資産や土地資産価格が下がると、利益が出ても負債の圧縮に当てられ、設備投資(実物)する余裕がなくなる。従って、量的金融緩和によって資産価格を上昇させれば設備投資が増えるだろう、というわけだ。(※)
しかしながら、水野和夫の指摘によると、日本企業が戦後から90年代までに銀行から受けた貸し出しの総額は、すでにキャッシュフローによる返済が不可能な水準に達していた(『100年デフレ』123頁)。これが本当だとすれば、これまでの量的緩和で企業のバランスシートが回復しきったのかどうか疑問がある。とすれば、あとどのくらい量的緩和を行えばよいのか、その金額には不確実性がかなりあることになる。
リフレ派には、量的緩和の具体的な額と継続年数を不確かさ付きで示してほしいところだ。
(お前は何様のつもりか、と言われてしまいそうだが)。
ところで、FRB議長のバーナンキの狙いは、企業のバランスシート調整にとどまらない。リスクの高い資産を買い取ることによって、資産投資への不安を解消しようというものだ。 
金融・サービス業が中心く、かつドルが基軸通貨である米国と違って、財の生産で稼ぐ企業にエクセレント・カンパニーが多く、かつ円が基軸通貨でない日本では、この手は使えないだろう。 
 ただし、オリンパスの例を見ると、「エクセレント・カンパニー」と呼ばれている企業が、本当にエクセレントなのか疑わしくなってくるのではあるが。  
 負債が多いからと言って、バランスシートをごまかすことは絶対にしないで欲しいと思う。日本全体での負債総額の値が信用できなくなる。
 現状を正確に把握できなければ、再生もない。


(※)
Wikipedia「リチャード・クー」の記事の「バランスシート不況」の項では、次のように「資産デフレスパイラル」として説明されている。
「・・・負債圧縮、借金返済のために資産の売却や設備投資の縮小が行われ、これが更なる資産価格下落や景気の悪化を呼び、企業のバランスシートを悪化させる。そしてこのことが更なる負債圧縮、借金返済を迫り、資産価格の下落や景気悪化をもたらすという悪循環が起きる」
(11月30日追加)

2011年10月11日火曜日

復興費用の財源は、国債の日銀引き受け?それとも増税? (その3)

シロートが勉強しながら論を進めるよりも、複数の専門家のバトルを見た方がよっぽど役に立つことに思い至った。
そこで、方針を変更して番組紹介をする。

2011年9月17日放送の「たかじんNOマネー」(テレビ大阪)は、
三橋貴明の主張を、竹中平蔵氏ら他のパネリストが評価するという形をとった。
(出演:やしきたかじん、三橋貴明、竹中平蔵、岸博幸、青山繁晴、大谷昭宏、眞鍋かをり)

トピックは、
野田政権の復興増税、円高への対応、 TPP、財政破綻の可能性、
の4つ。

この番組の動画は、例えば、以下のサイトで見ることができる。
http://varadoga.blog136.fc2.com/blog-entry-6680.html
http://channel.pandora.tv/channel/video.ptv?ch_userid=sasa3344&prgid=43394756

百聞は一見にしかず、ご覧あれ。50分間を割く価値は充分にあると思う。


竹名氏が経済学者らしくロジックに従ってとうとうと論ずるのを初めて見た。
岸氏も
「竹中先生、経済学者みたいですね、今日。彼、いつも政治学者っぽいんです、プライベートでは。」
と感想を述べている。

2011年10月9日日曜日

復興費用の財源は、国債の日銀引き受け?それとも増税?(その2)

直観的には、増税は金融引き締め、国債発行は緩和であるから、正反対の施策ということになると思う。
同じ現象に対して、そこまで処方が異なるということがあり得るのだろうか?

復興財源として国債(60年償還)の日銀引き受けを主張している人は、複数いるが、一般読者にも検証可能なように丁寧かつ分かりやすく論ずる能力は、三橋貴明氏が一番たけているように思う(→注1)。
一方、「増税」を主張する論者としては、正直誰をフォローすればよいのかわからないのだが、野口悠紀雄氏の本や記事は、一般読者による検証可能性を意識しているように見える。どういうモデルに依拠したのか、また、どこからが独自の仮説なのかが明示されているという点で良心的と言える。
(もちろん、だからと言って主張に賛同しているわけではない。)

さて、国債を発行してお金の量を増やしても、市中銀行の企業や市民に対する貸し付けが圧迫されてしまったら元も子もない(さすがに被災地域の住宅・建設・土木に関しては貸し付けが増えるものと筆者は期待する)のだが、この点について野口氏は、銀行が貸し付けに消極的で資金を国債購入する傾向は、長年の銀行の体質(流動性の罠)であって克服するのは難しいとみている。

円高については、 三橋氏・野口氏ともに、為替介入(政府短期証券発行→円→ドル→米国債購入)のために損失を出すのには反対という点で一致しているが、詳細は違う。
三橋氏は、円高の原因が、米欧の中央銀行が自国通貨の供給を大幅に増やす量的緩和を行っているからだとし、円の通貨供給量を増やすことで円高を是正することを主張する。これは同時にデフレ対策にもなる。その結果、均衡レートは今より円安になるはずで、あとは輸出企業の自助努力次第だというのが三橋氏のスタンスだと思われる。
他方、野口氏は、対米資産の取り崩し・売却、および、製造業からサービス産業へのシフトを主張する。
ただし、前者は、米国の怒りを勝って他の面で不利益を被る可能性があり、後者は構造転換なので時間がかかるものと推測される。

(注1)
小泉政権で金融政策を担当した高橋洋一氏も金融緩和を主張している。
三橋氏と高橋氏の違いで面白いのは、両者とも、マネタリーベースの拡大によって円高を緩和する処方を主張しているが、その規範的な帰結が違うというところだ。
高橋氏は、輸出の多い企業はエクセレント・カンパニーだから、日銀が円を増やさないのは怠慢だと言う。一方、三橋氏は、なぜごく一部の輸出企業のために為替介入して損を出さなければいけないのか、と輸出企業に対して厳しい。



【お断り】
筆者は、経済・財政・金融に関しては全くのシロート(せいぜい教科書程度)であるが、一有権者として、事態の推移を見守っているところである。
コメント&間違いの指摘を大歓迎!!


(修正履歴: 
・2011年10月12日、文中の括弧注を(注2)に移し、さらに修正・加筆。
・2011年10月13日、
三つ目の段落から、「国債を日銀引き受けとする処方はそれを意識しているはずである。三橋氏も当然考慮している」を削除 (推測の部分が大きいので)。
同段落の、「長年の銀行の体質」のあとに、括弧とともに「流動性の罠」の語を追加。
また、(注2)を削除した (公共事業・直接金融、および、公的インフラ被害と私的インフラ被害の比率について言及しようとしたが、勉強不足の恐れがあり削除した)。
そのほか、大意を変えない範囲で小幅な修正をした。

)

2011年10月7日金曜日

復興費用の財源は、国債の日銀引き受け?それとも増税?(その1)

筆者は、経済の専門家では全く無いのだが、復興費用をまかなう手段として専門家たちの間で挙げられている2つの施策
(a) 国債(60年償還)の日銀引き受け
(b) 増税
のどちらが正しいのか、その決着をかたずを飲んで見守っている。

学者や評論家といった専門家の間でも意見が分かれているが、力量のある専門家の間で互いに検証な形で議論なされない限り、国民は検証可能な手段を持てず、官僚、政治家、マスメディアおよびロビー団体の間の力学しか観察できず、かつ、結果を知った時にはすべてが決まっている、ということになっていしまう。

(従って、論争内容と同時に、意思決定プロセスについてもモニターする必要がある。
そちらは、政府等の内部事情に詳しいフォローされたい。例えば、長谷川幸洋氏と高橋洋一氏がよいかと思う。)

さて、上記、二つの対立する説のうち、
(a)を主張する専門家として、三橋貴明氏を、

(b)を主張する専門家として、とりあえず野口悠紀雄氏選んだ。

「その2」でさらに説明を続けるが、先に文献を紹介しておきたい。

まず、三橋氏の主張は、ネット上で多数閲覧することができるが、
例えば、日経ビジネスオンラインの記事
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110510/219901/
を参照されたい。

野口氏の著書は次の2冊を参照した。 
『日本を破滅から救うための経済学』(ダイヤモンド社、2010/7/29) 
『大震災からの出発 ―ビジネスモデルの大転換は可能か』(東洋経済新報社 、2011/7/8)
これら二冊の出版の間に、東日本大震災が起きているが、理論枠組み・結論ともに変わっていない。

同氏はまたネットにも多くの記事を書いている。
例えば、ダイヤモンド・オンラインの、
http://diamond.jp/articles/-/12245
http://diamond.jp/articles/-/14313
参照されたい。


(履歴: 2011年10月9日大幅修正。)