2011年7月27日水曜日

エネルギーとジェンダー

今日、ある女性芸術家にコンクリート打ち放し建築の悪口を言ってみた。

コンクリートは、その力強さと可塑性(曲面や複雑形状を実現できること)から、芸術表現に用いられてきた。(ル=コルブュジエ、オスカー=ニーマイヤー、ルイス=カーン、日本では、安藤忠雄、丹下健三ほか。)

しかし、エネルギー消費の観点からは、製造時にふんだんにエネルギーを消費するうえに、完成してからも、その巨大な熱容量が冷暖房負荷を増やす。ヒートアイランドの一原因でもある。 (もちろん熱量量はもろ刃の剣だ。きちんと設計すれば蓄熱・蓄冷を実現的できる。)(注1)

なんでこうなってしまったのか? それに対する、彼女の答えは、シンプルなものだった。

「それは男のロマンだからだ。」

ジェンダー論はあまり好きではないのだが、当たっている。

そもそも、バウハウスのときから、モダニズムは温熱環境には鈍感なところがあった。冬のバウハウスはものすごく寒かったのだ。

日本の場合、事情がやや異なる。
安藤氏や丹下氏の建築は、西洋のモダニズムと日本の伝統様式との見事な融合とみなされているのだが、
視覚的・形式的にはそうでも、自然の微気候を巧みに利用する本来の日本の伝統とは、中身がまるで違うのだ。

「絶対安心な原発もあるんですけどね。」
安藤氏は石原都知事との対談でそう言った。
(東京MXTV「東京の窓から」、7月16日)。
3.11以後に大きく方向転換をしたということだが、モダニズム、そして「男のロマン」からの脱却は難しそうだ。

だが、これは安藤氏に限ったことではない。
鉄腕アトムに始まって、原子力、いや先端科学技術のかなりの部分が「男のロマン」であったのだろう。

原子力導入の立役者である中曽根康弘は、最近になって「太陽エネルギー」国家への政策転換を明言した。
だが、その転換に不可欠な「省エネルギー」や「ライフスタイルの見直し」までは踏み込んでいない。

「太陽エネルギー」も、多分に「男のロマン」ではないだろうか。

世の中の人間の半分、そして(研究者を含む)フルタイムワーカーの圧倒的多数が男性であることを考えると、落としどころはこのへんなのだろう。


(注1)
コンクリート打ち放しは「定義によって」最外層が裸のコンクリートであるから、内側で断熱していないのなら、コンクリートにたまった大量の熱が室内に伝わる。
断熱するとしても、「定義によって」外側ではなく内側を断熱してあることになる。その場合結露防止の処置が必要なはずだ(防湿や空気層の挿入といった工夫)。(詳細は専門家に確認する必要がある)。


(注1補) 「軽量気泡コンクリート」(へーベル、ALC)は、熱伝導率・容積比熱ともに、木材と同じくらいである。(普通コンクリートの熱伝導率はこれらの約10倍、容積比熱は約3倍である。)
ヒートアイランドの原因となる因子はとしては、表面の熱的性質、たとえば、放射率(=吸収率)、反射率、外側表面熱伝達率などがあるが、これらは表面の幾何学的構造に影響を受けるので、ちゃんと調べてみないとわからない。ここでは、とりあえず軽量気泡コンクリートの(外壁としての)熱的性能は木材とそれほど変わらない可能性があるとだけしておこう。一方、「軽量気泡コンクリート」の強度などの力学性能については、まだ調べていない。


(以下、更新日と更新内容)
作成2011年7月26日。

訂7月27日。

二訂8月1日 
(アントニン=レーモンドの名前を削除。レーモンドの作風は大きく変化しており、中心はむしろ戦後の木造住宅(レーモンドスタイル)。自称技術史家として反省。他の建築家についても、単純化しすぎていないかどうかを確認する必要がある。不適切なら修正の予定。コメント歓迎します。
また、注(※)を削除(上と同じく、建築家の系譜について単純化の恐れがあったため)。代わりに、(注1)を追加。そのほか複数の表現を若干修正。)

三訂8月6日~7日
(注1への補注)を追加。(注1)の一部表現を修正。原注の生き残り(※※)を割愛(レイアウトが見にくくなったため)。

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